国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(平成29年度)」によると、30年後に日本の人口は5分の4となり、50年後には3分の2になると推計されています。
これは企業にとって国内消費市場の縮小による売上減だけではなく、労働人口の減少をも意味します。
さらに、テレワークやオンライン会議の普及、ワークライフバランスの充実など、若い世代の働き方や仕事そのものに対する考え方も変化しつつあります。
今後は、限られた人材で、いかに業務を標準化し、生産性を高めることができるかが重要であり、社員の個人商店化や属人的な働き方が残る中小企業が受ける影響は少なくありません。
仕事に対する多様な考え方を持つ人材の力を正しい方向に集中させることのできる社内環境づくりが必要です。
中小企業にありがちな営業の進捗や顧客情報の見える化ができていない状況は、誰がどこで何をやっているか分からず、助け合いや分業ができない非効率な組織といえます。
反対に自身の前後の業務が見える化できている組織では作業効率が上がるだけでなく、キャリアパスが明確になり、助け合いや気遣い合える気運の醸成がチームワークをも強めてくれます。
そのような社内環境をデジタル技術の活用で実現する一つの方法が企業の「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という考え方です。
この言葉は、実は最近のものではなく、スウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が2004年に発表した論文内の『ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる』という仮説に見ることができます。
時を経て、現在のビジネス用語のトレンドとなった「デジタルトランスフォーメーション(DX)」。
サービスとしてそれを提供する企業の都合によって解釈が多義に渡りますが、概ね「ITを一つのツールとして業務効率化を図る」と定義されます。
かつての「IT化」や「IT革命」は、それそのものが目的でしたが、企業の「DX化」においてITは手段に過ぎない点が特徴です。
国内消費市場の縮小や労働人口の減少、そして若い世代の仕事に対する考え方の変化も相俟って、企業は再び変革を求められています。
しかしながら、企業のDX化が一朝一夕に実現することはありません。
最初から完璧なものとしてスタートするのではなく、徐々にカスタマイズやトライアンドエラーを繰り返し、既存社員の協力や理解を得ながら進めることも必要だと感じます。
そして、能力、経験、世代の異なる人材が互いに情報を共有し、業務の見える化、標準化をするツールとしてITを活用することに「企業のDX化」の本髄があるのです。
ITは私たちの生活を便利にし、社会を大きく変化させました。
クラウド型の情報共有が一般的になった今、テレワークでどこにいても働ける環境が整い、企業も家賃や光熱費といった固定費の削減ができます。
そこにDX化が促進され、仕事の効率が上がることで週休3日制といった働き方が実現するのもそう遠くない、、、というのは夢のまた夢なのかも知れません。